胆石,総胆管結石
胆石症というのは、胆のうや胆管に石ができて、時に痛みなどさまざまな症状を引き起こす病気の総称です。胆汁という一種の消化液が肝臓でつくられ、胆管を通って十二指腸に放出されます。この胆汁によって、「胆石」という石ができてしまうことがあるのです。この石は、胆汁が濃縮される胆のうに一番よくできます(胆のう結石)、胆のうにできる結石は、コレステロール結石という白っぽい丸みをおびた石であることが多く、ときには何十個も一度にできることもあります。しかし、時には胆管のいろいろな場所にできてしまうこともあります(総胆管結石)。胆管結石は胆のう結石が総胆管に落ちた場合(落下結石)と、胆管にできた(胆管原発結石)があります。
胆管結石はビリルビン結石という黒っぽいものが多く、一個でも激しい症状を引き起こすことがあります。
症状や治療方針が異なりますので、ここでは胆のうにできる胆のう結石について説明します。
胆石発作のような激しい症状は、ともかく痛みを抑えなければなりません。鎮痛剤や胆のうの緊張をゆるめる薬剤を用います。胆嚢炎を併発している場合は、それに細菌感染が起こっているので、食事を止めたり、抗生物質が用いられたり穿刺が必要になることがあります。(穿刺について:胆嚢内が感染してしまって、強い痛みや感染がおこっている場合は、胆嚢に針を刺して胆嚢内に貯留している感染胆汁を吸引することにより症状が軽快することがあります。この手技をPTGBAと呼びます。また、刺して吸引するだけでなく、しばらく細い管を留置することがあります。この手技をPTGBDと呼びます。効果的な場合は翌日から食事が食べられる程度に改善します。)
しかし、これでとりあえず痛みは治まったとしても、根本的な原因である胆石はなくなるわけではありませんから、いつ再発するかわかりません。
石をなくするという根本的な治療に踏み切るかどうかは、悪性の疾患ではないため,患者さんの考え方・社会的状況と、放っておくと胆石発作が再発、不快症状がしつこく続く、場合によると癌の危険が増す、といった医学的な状況により判断致します。ご希望等ございましたら、遠慮なく担当医にお話しください。
石があるのに症状がない「無症候性胆石」 偶然の超音波検査などで、胆のうに石が見えるのに本人には全く症状がない、という例が決して珍しくありません。 症状がなければそのまま経過をみていく、というのが当施設の考え方です.しかし、いつ症状を引き起こすかわかりませんし、石の刺激で胆のうの壁が厚くなってきたり、癌が出てきたりという危険もないとはいえませんので、超音波検査などで定期的に検査観察を続けていくことをお薦め致します.担当医にご相談ください.
1990年以前,胆嚢摘出術は開腹手術のみでしたが、それ以降、腹腔鏡下胆嚢摘出術が普及してきました.比較的炎症が軽い場合は腹腔鏡下手技で行いますが、炎症が高度な場合は現在でも開腹手術を行っています。個々に状況がいろいろと異なりますので担当医にご相談ください。
・ 腹腔鏡下胆嚢摘出術
おなかを一カ所1.2cmほど切開し、腹腔内に空気を入れます。空気を入れることにより腹腔内に腹腔鏡と言うカメラ(正確にはビデオスコープ)を挿入することで腹腔内を観察することができるようになります。
このスコープでおなかの中を見ながら、2カ所5mmと一カ所2mmほどの切開を加え胆嚢を摘出する手術を施行します。
炎症の程度はあくまでも術前の検査による予想ですので、実際はもっと高度な場合もあります。腹腔鏡下手術で対応できない場合は途中で開腹手術に移行する場合があります(1~2%程度)。手術時間は30分から2時間程度です。その前に全身麻酔をかけるのに1時間程度、全身麻酔から覚めるのに2時間程度かかります。
・ 開腹胆嚢摘出術 従来の開腹手術ですが、以前よりも傷の大きさは遥かに小さくなっています。
胆嚢自体を手術で摘出するため胆嚢結石が再発することはありません。しかし、胆嚢にある石が検査後から手術で胆嚢を摘出するまでに胆管に落ちてしまうことがあります。薬で石を溶かしたり、衝撃波での破砕は残念ながら効果が不十分な事も多いので、当院ではあまり施行しておりません。
胆嚢を摘出してしまって問題ないかという疑問を感じるかと思います。胆石があって症状がある方は、胆嚢があまり正常に機能していない事が多いのです。あまり正常に機能していないので、胆嚢を取っても悪影響を及ぼす事はほとんどありません。また、胆嚢を摘出しても“油物を控えなくては”とか“食生活を変えなくては”という心配はほとんどありません。むしろ症状がなくなり、食欲が旺盛になる方の方が多いので、体重増加に気をつけなければならない事もしばしばあります。
腹腔鏡下胆嚢摘出術 翌日に食事開始、おなかに入っている管を抜きます。この日の午前中はまだ辛いですが、午後にはだいぶ元気になる方が多いです。手術翌日から食事を開始し、術後2日目から4日目までに状況に応じて退院となります。糸は溶ける糸なので抜糸の必要はありません。退院後シャワー・入浴も構いません。
開腹胆嚢摘出術 2~3日後に飲水を開始します。4~5日目に食事を開始します。術後5~7日目に状況に応じて退院となります。どうぞ、お気軽にご相談ください。